キッチンで洗い物をしていたら、シンクに水がどんどん溜まっていく──今まさにそんな状況で、このページを開いた方も多いと思います。
排水口(「排水溝」と書かれることも多いですね)のつまりは、住宅設備トラブルの中でも特に相談の多い症状です。ただ、実は「どこで詰まっているか」によって、自分で直せるかどうかが最初から決まっています。むやみに突いたり薬剤を流したりする前に、まず詰まりの場所を見極めるのが一番の近道なんです。
この記事では、現場歴20年の設備エンジニアである筆者が、「30秒でできる詰まり箇所の診断」と、キッチン・お風呂・洗面台の場所別の対処法を解説します。ネットでよく紹介されているけれど、プロとしてはおすすめできない方法についても正直に書きました。
【最初に】どこが詰まってる?30秒診断
作業を始める前に、次の4つだけ確認してください。ここを飛ばすと、直らないつまりに時間とお金を使うことになります。
①詰まっているのは1箇所だけ?
キッチンだけ、お風呂だけ、というように詰まりが1箇所なら、その場所の排水口〜排水トラップまわりが原因のことがほとんど。この記事の場所別セクションで自分で直せる可能性が高いです。
②複数の排水口が同時に流れにくくなっていない?
キッチンもお風呂も洗面台も流れが悪い──この場合、原因は各排水口ではなく、その先で合流する排水管や屋外の排水枡(ます)にあります。家の中をいくら掃除しても直りません。ここは残念ながら自分で直せる領域を超えているので、業者に相談してください。
③汚水が逆流してきていない?
排水口から水が逆流してくるのは、排水管がほぼ完全に塞がっているサインです。この状態で水を流し続けると、あふれて床や階下を汚す二次被害につながります。水の使用をやめて、業者を呼びましょう。
④「ボコボコ」と音がするだけ?
水は流れるけれど、流すたびにボコボコ・コポコポと音がする場合は、排水管が狭くなり始めている「つまりの前兆」です。完全に詰まる前の今のうちに、この記事の掃除・洗浄を実践すれば防げます。
②や③に当てはまった方は、自分で格闘するより電話した方が早くて安く済むケースです。相談だけなら無料の業者を載せておきます。
①や④だった方は、ここから場所別に直していきましょう。
【キッチン】排水口がつまる原因と対処法
キッチンの排水口つまり、一番多い原因は「油」です。
「油はそのまま流してないよ?」と思うかもしれません。でも、お皿についた料理の油、フライパンの残り油、食品カスに含まれる油分──日々の洗い物で少しずつ油が排水管の内側にこびりついていきます。これが冷えて固まり、食品カスや洗剤カスと絡み合って、水の通り道がどんどん狭くなっていくのが典型的なパターンです。
対処法①:排水トラップ(ワントラップ)の掃除
まずは排水口のすぐ下にある部品の掃除から。ここにゴミや油汚れが溜まっているだけ、というケースが本当に多いです。
- 排水口のフタとゴミ受けカゴを外す
- お椀をかぶせたような形の「ワントラップ」を反時計回りに回して外す
- カップの内側とトラップ周辺を使い古しの歯ブラシでこすり洗いする
- 排水管の入り口に見えているゴミも取り除く
- 元に戻して水を流し、流れを確認する
ワントラップは工具なしで外せて、戻すのも回すだけ。ここは安心して自分でやってください(後で出てくる「シンク下の配管」とは別物です)。月1回やるだけで、つまりの予防にもなりますよ。
対処法②:50〜60度のお湯+食器用洗剤で油をゆるめる
トラップを掃除しても流れが悪いなら、排水管の中で油が固まっている可能性があります。
- 食器用洗剤を多め(大さじ2〜3杯)に排水口へ流す
- 50〜60度のお湯をゆっくり注ぐ
- 15〜30分放置する
- もう一度お湯を流して確認する
ポイントはお湯の温度です。熱湯(100度)は絶対に使わないでください。一般的な排水管に使われている塩ビ管は熱に弱く、熱湯を流すと変形したり接合部がゆるんだりすることがあります。給湯器の設定を60度にしてお湯を出すのが手軽で確実です。
対処法③:液体パイプクリーナーを使う
市販の液体パイプクリーナーも有効です。キッチンなら、パッケージに「油汚れに強い」「キッチン用」と明記された製品を選んでください。
もう一段強力なものが欲しい場合は、業務用としても定番の粉末タイプがあります。私たち業者も現場で普通に使う製品で、油と髪の毛の両方に強いのが特長です。

ピーピースルーF
使うときの注意点は3つ。
- 必ず換気する(窓を開けるか換気扇を回す)
- ゴム手袋を着用する
- 種類の違う洗浄剤を続けて流したり混ぜたりしない(有毒ガスが発生する危険があります)
対処法④:真空式パイプクリーナーで吸い出す
洗浄剤でも改善しないしつこいつまりには、ポンプの力で詰まりを動かす「真空式パイプクリーナー」という道具があります。ラバーカップの強力版のようなもので、シンクに水を張ってポンプを引くだけ。薬剤と違って何度でも使えるので、1本持っておくと台所でもお風呂でも使い回せます。

SKR CLEAN 真空式パイプクリーナー
【お風呂】排水口がつまる原因と対処法
お風呂の排水口つまりは、原因の大半が「髪の毛」です。
人の髪は1日に50〜100本ほど自然に抜けると言われていて、その多くがお風呂で流れます。髪の毛に石鹸カスや皮脂が絡みつき、ヘドロ状のかたまりになって排水口を塞いでいくわけです。
対処法①:ヘアキャッチャーと排水トラップの掃除
お風呂の排水口は「フタ→ヘアキャッチャー→排水トラップ」という構造になっています。
- 排水口のフタを外す
- ヘアキャッチャーに溜まった髪の毛やゴミを取り除く
- 筒状の排水トラップ(封水筒)を回して外す
- トラップの内側と排水口まわりを歯ブラシで掃除する
- 手が届く範囲で排水口の中のゴミも取り除く
- 元に戻して水を流し、確認する
正直、お風呂の排水口掃除は見た目がなかなかキツいです。ただ、ここを放置した先にあるのが「洗い場に汚水が溜まるお風呂」なので、月1〜2回の掃除で確実に防ぎましょう。
対処法②:パイプクリーナーで髪の毛を溶かす
手で取れない奥の汚れには液体パイプクリーナーを。お風呂の場合は、パッケージに「髪の毛を溶かす」「髪の毛・ヌメリ用」と書かれた製品を選んでください。規定量を注いで15〜30分置き、水で流すだけです。放置時間を長くしすぎると、溶けた汚れが奥で再び固まることがあるので、規定時間は守りましょう。
それでも流れが悪いときは、ラバーカップ(スッポン)の出番です。実はラバーカップは「押す」より「引く」が大事など、効果を左右するコツがいくつかあります。詳しい選び方と使い方は別記事にまとめているので、そちらを見ながら作業してください。
👉 ラバーカップ(スッポン)の正しい使い方!プロが教える選び方と注意点
【洗面台】排水口がつまる原因と対処法
洗面台のつまりは、髪の毛・石鹸カス・歯磨き粉のカスが主な原因です。排水管の口径がキッチンやお風呂より細いので、少しのゴミでも詰まりやすい場所なんですよね。
対処法①:ポップアップ栓の掃除
洗面台には、引き棒で開け閉めする「ポップアップ栓」がついていることが多く、この栓の裏側に髪の毛が絡みついているケースが非常に多いです。
- ポップアップ栓を引き上げて外す(上に引っ張るだけで外れるタイプが多い)
- 栓の軸に絡んだ髪の毛やゴミを取り除く
- 排水口の中を歯ブラシやピンセットで掃除する
- 栓を戻して水を流し、確認する
※引っ張っても外れないタイプ(レバーと連動して固定されているもの)もあります。その場合は無理に外そうとせず、排水口を歯ブラシで掃除できる範囲までにしてください。
「つまりだと思っていたら、栓にゴミが溜まっていただけ」というケースは本当に多いですよ。
対処法②:パイプクリーナーで奥の汚れを溶かす
ポップアップ栓を掃除しても改善しないなら、排水管の中に髪の毛と石鹸カスが溜まっています。お風呂と同じく「髪の毛・ヌメリ用」と明記された液体パイプクリーナーを規定量・規定時間で使ってください。
【プロの本音】洗面台下の配管の分解掃除はおすすめしません
ネットで洗面台のつまり解消法を調べると、「シンク下のS字配管はナットを手で回せば外せるので、分解して掃除しましょう」という方法がよく紹介されています。
私はこれ、一般の方にはおすすめしません。
理由は、外すこと自体より「戻した後」にあります。配管の接続部にはパッキンが入っていて、何年も同じ位置で潰れて密着することで水を止めています。劣化したパッキンを一度動かすと、元通りに締めても水が漏れるようになるケースが少なくないんです。現場でも「掃除のために外したら、それから洗面台の下が濡れるようになった」という相談は珍しくありません。
つまり解消のつもりが水漏れ修理になったら本末転倒です。ポップアップ栓の掃除とパイプクリーナーで改善しなければ、その先は分解せずプロに任せるのが結果的に安上がりですよ。
やってはいけないNG対処法
つまりを直そうとして、逆に悪化させてしまうパターンです。次の5つは避けてください。
- 熱湯を一気に流す:塩ビ管が変形・破損するおそれがあります。お湯は50〜60度まで
- 針金や硬い棒を突っ込む:排水管を傷つけたり、つまりを奥へ押し込んだりします
- 種類の違う洗浄剤を混ぜる・続けて使う:塩素系と酸性タイプが混ざると有毒ガスが発生します。命に関わるレベルの危険なので、使用前に必ずラベルを確認してください
- 重曹+お酢に期待しすぎる:泡は出ますが、固まったつまりを解消する力はほぼありません。予防や軽いヌメリ取りまでと考えてください
- 配管の分解:前述の通り、パッキンの劣化次第で水漏れに直結します
業者に頼むべきサインと費用の目安
「自分でやってみたけど直らない」ときは、深追いしないのが正解です。次のケースは業者に任せた方が確実で、結果的に安く済みます。
- パイプクリーナーやラバーカップを試しても改善しない(排水管の奥で詰まっている可能性)
- 複数の排水口が同時に流れにくい(排水枡・排水管本管の問題)
- 汚水が逆流してくる(ほぼ完全な閉塞)
- 何度直してもすぐ再発する(配管の勾配や劣化など構造的な原因)
費用の目安として、業界大手の公開料金例では、ポンプ作業で済む軽度のつまり除去が1万円前後(税込・手数料込み)。排水管の奥のつまりで「トーラー」という専用機器を使うと25,000〜30,000円程度、高圧洗浄まで必要になると35,000〜40,000円程度が実例です。地域や業者によって幅はありますが、「軽度なら1万円前後、奥のつまりは3万円前後から」が判断の物差しになります。
もう一つ覚えておきたいのが時間帯。深夜・早朝や年末年始は割増料金になる業者が多いので、逆流していない限りは、翌日の日中に依頼した方が安く済みますよ。詳しい相場と内訳は水漏れ・水まわり修理の費用相場記事にまとめています。
業者選びで一番大事なのは、作業前に必ず見積もりを出してもらうこと。「開けてみないとわからない」と言って金額を示さないまま作業を始める業者は避けてください。無料で見積もり比較ができる窓口を使うと、相場から外れた請求を防げます。
つまりを予防する日々のメンテナンス
詰まってから慌てるより、予防が一番安上がりです。場所別にポイントをまとめました。
キッチン
- 油はキッチンペーパーで拭き取ってから洗う
- ゴミ受けネットで食品カスをキャッチする
- 週1回、50〜60度のお湯をたっぷり流す(油の固着防止)
お風呂
- 入浴後にヘアキャッチャーの髪の毛を取る(毎日がベスト)
- 月1回、パイプクリーナーで洗浄する
- 排水口のフタとトラップは月1回掃除する
洗面台
- ヘアキャッチャーを設置して髪の毛を流さない
- 月1回、ポップアップ栓を外して掃除する
どれも数分の習慣ですが、これだけでつまりのリスクは大きく減らせます。
まとめ:まず「どこが詰まっているか」、それから場所別の対処を
最後に、この記事の流れをおさらいします。
- 最初に30秒診断:複数箇所同時・逆流なら迷わず業者へ
- キッチン:油が原因 → トラップ掃除 → お湯+洗剤 → パイプクリーナー → 真空式
- お風呂:髪の毛が原因 → ヘアキャッチャー掃除 → パイプクリーナー → ラバーカップ
- 洗面台:ポップアップ栓の掃除 → パイプクリーナー(配管の分解はNG)
排水口まわりの掃除だけで直るケースが本当に多いので、まずはそこから試してみてください。それでも改善しなければ、無理に深追いせず業者に相談を。自分で配管を傷めてしまうと、修理費用がかえって高くつきます。
おうちラボでは、水まわりのトラブル解決法を現役の設備エンジニアが現場目線で解説しています。困ったときは、ほかの記事もぜひ参考にしてくださいね。
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